映画館に向かう途中、かばんの中で水が零れて、すべてのものが水浸しになった。 めずらしく本が一冊も入っていなかったからまだよかった。
ただ、財布の中に入っていたお札もびしゃびしゃで、映画のチケットを発券しようとしてもお札が機械に入らない。 私の財布には、一万円札が1枚と、千円札が8枚入っていたけど、すべてが金としての機能を失ったただの紙になった。
カードで支払いをして、映画を観る。
眼鏡ケース、眼鏡拭き、ナイロンのバッグ、ハンカチは、2時間ちょっとの映画を観終わったらきれいに乾いていた。眼鏡拭きなんて水が絞れそうなくらい濡れていたのに、かんぺきに乾燥していて、安堵するのと同時に、こんなに自分がいる環境って乾燥してるんだ…と恐ろしくもなる。
家に戻って、お札を広げて洗濯ばさみに干した。
カード類、診察券、ポイントカードもすべて財布から机に出してならべる。(病院の診察券がめっちゃ多い)一度濡れてしまった紙は質感が変わって、ちがう人格を持ったよう。
財布の皮もまばらに濡れて、なんか申し訳ない気持ちになる。
カード類を拭いて、あまり使っていないポーチに入れた。明日は、干してあるお札を回収して、このポーチを財布として使おうと思う。
一度お金としての機能を失った紙が、また乾いたら紙幣としてよみがえるのは不思議な感覚で、結局得したのか損したのかよくわからない気分になった。
Comments